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ていく強さを知ることの大事さが説明された。
Colvin先生は、がんで亡くなる子供をもつ親のサポート、また親を亡くす子供のケアについても講義をされた。子供についてはその成長過程に応じた対応が必要であるが、いずれにせよ死から子供を遠ざけることなく、真実を分かち合うことが重要であると強調された。
4.コミュニケーション
患者や家族とのコミュニケーションについては、緩和ケアのセミナー以外の場でも取り上げられていた。学会のメインプログラムの中のシンポジウムに参加し、英国のカウンセラーであり、がんとともに生きる会の指導者でもあるLinda Benn先生のお話を聞くことができた。先生は英国での調査から、診断時の患者への説明の実態として、情報なしに治療が開始される例、15分以内の短い説明の例、廊下や電話で行われる説明の例などを紹介し、患者とのコミュニケーションがいかに不足しているかを報告された。不安や怒りなどをもつがん患者とのコミュニケーションの技術が十分教育されていない現状、傾聴のトレーニングが必要であることを強調された。
緩和ケアのセミナーでは、コミュニケーションについてのワークショップがあった。効果的なコミュニケーションの弊害について、とくに終末期患者と死について語ることの困難さと、弊害となる因子についてグループ討議を行った。さまざまな要因が上げられたが、ケアを提供する側の自分自身の死を見つめることの不安や恐怖とともに、真実を語ることを拒否する家族の存在が弊害となっているという意見は、アジアの国々に共通する課題であった。
5.チームケア
緩和ケアの実践においてチームによるアプローチは基本であり、チームがいかに機能しているかが、ケアの質を左右するといっても過言ではないと思う。今回は、がん看護のセミナーのシンポジウムで「がんのケアはチームワーク」というテーマが取り上げられ、シンガポールのShaw先生のお話を聞くことができた。また、緩和ケアセミナーでは、オーストラリアの緩和ケアの専門家であり教育者でもあるJoy Brann先生がファジリデーターとなり、チームワークについてのワークショップが行われた。
お2人の先生の講義の中でとくに印象的であったことは、「チームとは、単にいろいろな職種が集合するだけでは成り立たない。メンバーが一緒に働いていることが重要であり、チームとして機能していなければならない。それは[1+1=2]ではなく、3になるグループである」ということ。当たり前のことであるが、たいへん実感のこもった印象的な説明であった。
機能しているチームとは、
?明確な共通のビジョンをもっている
?成功も失敗も共有し合う
?それぞれの役割に柔軟性がある
?難しい意思決定を共有する
?実存的な関係をもつ
などがあげられた。
逆に、チームがうまく機能していない状態とは、
?ゴールが明確でない
?互いの信頼関係がない
?役割が重複している
?協力関係ではなく闘争の関係
?話すだけで行動が伴っていない
などがあげられた。
ところで、チームが機能するか否かには、メンバー間のコミュニケーションのあり方が大きく影響する。互いを批判しあう自由のない厳格な、上から下へのコミュニケーションではよい関係は育たない。互いをサポートし合い成長していくためには、互いの感情や考えに耳を傾け、誠実な態度で意見の違いも認め合い、勝者と敗者ではなく両者が勝者となるような相互尊重のコミュニケーションが行われなければいけない。そして、相手

 

 

 

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